🎯 このレッスンのゴール
- 経営理念・PDCAサイクルと、代表的な経営組織のかたちが分かる
- CSR・コーポレートガバナンス・BCPなど、会社のあり方の用語を言える
- QC七つ道具やABC分析など、業務分析・意思決定の手法を見分けられる
- P/L・B/Sの基本と、損益分岐点を自分で計算できる
こんにちは、先生役の「パスもん」です。ストラテジ系の入口は「会社ってどう動いているの?」というお話。むずかしい計算は少なめで、用語の意味を押さえれば得点源になります。最後の損益分岐点だけ、かんたんな計算を一緒にやってみましょう。
1. 企業活動の基本:経営理念とPDCA
会社(企業)は、商品やサービスを提供して利益(もうけ)を生み出し、その活動を続けていくための組織です。その活動のいちばん上にある考え方の柱が経営理念です。
経営理念とは、「この会社は何のために存在し、どんな価値を社会に届けるのか」という基本的な信念のこと。これをもとに、中長期の目標である経営戦略や、具体的な経営計画が立てられていきます。
仕事を改善し続けるための基本の考え方がPDCAサイクルです。
・P(Plan=計画):目標を決め、やり方を計画する
・D(Do=実行):計画どおりにやってみる
・C(Check=評価):結果を確認し、計画とのズレを調べる
・A(Act=改善):うまくいかない点を直し、次の計画へつなげる
この4つをぐるぐる回し続けることで、仕事の質をだんだん高めていきます。
「1か月で2kg減らす計画を立て(P)、運動して(D)、体重を測って効果を確認し(C)、思ったより減らないので食事も見直す(A)」。これを毎月くり返すのがPDCA。会社の改善も、これと同じリズムで回しています。
2. 経営組織のかたち
会社は人の集まりなので、仕事を分けて担当する「組織のかたち(組織形態)」があります。ITパスポートでは、次の4つの代表的な形がよく問われます。
| 組織形態 | どんな分け方? | 特徴 |
|---|---|---|
| 職能別組織 | 「営業」「製造」「経理」など仕事の種類(機能)ごとに部門を分ける | 専門性が高まる。基本的な形だが、部門間の連携がとりにくいことも |
| 事業部制組織 | 「家電事業部」「食品事業部」など製品・地域ごとに分け、各事業部に権限を持たせる | 意思決定が速い。利益責任が明確。一方で機能が重複しがち |
| マトリックス組織 | 職能(縦)と事業・プロジェクト(横)の両方に所属する格子状の形 | 柔軟だが、上司が2人になり指示が混乱しやすい |
| プロジェクト組織 | 特定の目的のために、各部門から一時的に人を集めて編成。完了後は解散 | 機動的に動ける。目的達成後は元の部署へ戻る |
新しいアプリを開発するために、営業部・開発部・デザイン部から3人ずつ集めてチームを作り、リリースが終わったら解散した――これはプロジェクト組織です。一方、ふだんから「開発部」「営業部」と機能で分かれている形は職能別組織です。
3. 会社のあり方:CSR・ガバナンス・BCP
会社は利益を追うだけでなく、社会に対して責任ある存在であることが求められます。ここはカタカナ用語が多いので、意味をセットで覚えましょう。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| CSR (企業の社会的責任) | 会社が、利益だけでなく環境・人権・地域社会などに配慮し、社会的な責任を果たすこと。 |
| コーポレートガバナンス (企業統治) | 会社が健全・公正に経営されるよう、経営者を監視・けん制するしくみ。社外取締役などが役割を担う。 |
| コンプライアンス (法令遵守) | 法律やルール、社会の常識をきちんと守って活動すること。 |
| BCP (事業継続計画) | 地震・火災・システム障害などの非常事態が起きても、重要な事業を止めない/早く復旧させるためにあらかじめ立てておく計画。 |
| ディスクロージャー (情報開示) | 経営状況や財務情報などを、株主や社会に対して公開すること。 |
コーポレートガバナンスは「経営者をきちんと監視するしくみ」、コンプライアンスは「ルールを守ること」。BCPは「非常時でも事業を続けるための計画」で、災害対策そのものではなく“事業を止めない”ことが目的です。試験では言葉のすり替えで誤りを作ってくるので、目的をセットで覚えましょう。
4. ヒューマンリソースと行動科学のさわり
会社を動かすのは「人」です。人材を活かすための考え方をヒューマンリソースマネジメント(人的資源管理)といい、ITパスポートでは次のような用語が出ます。
- OJT:実際の仕事をしながら先輩が教える、職場内での教育。
- Off-JT:職場を離れて行う研修・セミナーなどの教育。
- HRM / タレントマネジメント:人材の能力を見える化し、適材適所で活かす取り組み。
- ワークライフバランス/ダイバーシティ:仕事と生活の調和、多様な人材の活用。
また、人のやる気(モチベーション)を研究する行動科学の代表として、マズローの欲求5段階説があります。人の欲求は「生理的欲求 → 安全 → 社会的(所属) → 承認 → 自己実現」とピラミッド状に高まっていく、という考え方です。低い欲求が満たされると、より高い欲求を求めるとされます。
5. 業務分析・意思決定の手法
会社では、データを整理して問題を見つけ、よりよい判断をするためのさまざまな手法を使います。ここはITパスポートの頻出ポイント。とくにQC七つ道具は、図と名前をセットで覚えましょう。
QC七つ道具(品質管理の代表的な図表)
| 名前 | どんな図? | 使いどころ |
|---|---|---|
| パレート図 | 項目を件数の多い順に棒グラフで並べ、累積比率を折れ線で重ねた図 | 「重要な少数」を見つける(ABC分析と相性◎) |
| 特性要因図 (フィッシュボーン図) | 結果(特性)に対する原因を、魚の骨のように枝分かれで整理した図 | 原因の洗い出し・整理 |
| 散布図 | 2つの量を縦軸・横軸にとり、点で打った図 | 2つの数値の関係(相関)を見る |
| ヒストグラム | データの値の範囲ごとの個数を、棒グラフで表した図 | データのばらつき・分布の形を見る |
| 管理図 | 時間の経過にそった測定値と、上下の管理限界線を引いた折れ線図 | 工程が安定しているか、異常がないかを監視する |
| チェックシート | 項目ごとに「正」の字などで件数を数えて記録する表 | データの収集・集計 |
| 層別 | データを機械別・時間別などのグループに分けて分析する考え方 | 原因のちがいを浮かび上がらせる |
「件数の多い順に並べて重要項目を探す」のがパレート図、「原因を魚の骨で整理する」のが特性要因図。試験ではこの2つの説明を入れ替えて誤りを作ることが多いので、図のイメージで覚えておきましょう。
そのほかの分析・意思決定の手法
| 手法 | かんたんな意味 |
|---|---|
| ABC分析 | 金額や重要度の大きい順にA・B・Cのランクに分け、Aを重点管理する。パレート図と組で使う。 |
| 回帰分析 | データの関係を直線などの式で表し、ある値から別の値を予測する手法。 |
| 線形計画法(LP) | 制約条件(材料・時間など)のもとで、利益が最大などになる組み合わせを求める手法。 |
| 在庫管理 | 在庫が一定量(発注点)まで減ったら発注する方式や、ムダの少ない経済的発注量(EOQ)を考える。 |
| IE(インダストリアル エンジニアリング) | 作業のムリ・ムダを調べて改善する「作業分析・工程分析」の手法。 |
| ブレーンストーミング | 批判せず自由にアイデアを出し合い、質より量で発想を広げる会議手法。 |
| デシジョンツリー (決定木) | 選択肢や起こりうる結果を枝分かれの木で表し、期待値などから意思決定する手法。 |
(1)批判しない (2)自由奔放(突飛でもOK) (3)質より量 (4)結合・便乗(人のアイデアに乗っかってOK)。「とにかくたくさん、否定せずに出す」のがコツです。
6. 会計・財務:P/LとB/S
会社のお金の状況をまとめた書類を財務諸表といいます。ITパスポートでは、おもに2つを押さえます。
| 書類 | 表すもの | イメージ |
|---|---|---|
| 損益計算書(P/L) | 1年間でどれだけもうけたか(収益・費用・利益) | 1年分の家計簿(期間) |
| 貸借対照表(B/S) | ある時点での財産の状態(資産・負債・純資産) | ある瞬間のスナップ写真(時点) |
B/Sは左に資産、右に負債+純資産を書き、左右の合計が必ず一致します(だから「バランスシート」)。P/Lでは、売上から費用を段階的に引いて、いろいろな「利益」を計算します。
P/Lの「利益」の段階
| 利益の名前 | 計算(ざっくり) |
|---|---|
| 売上総利益(粗利) | 売上高 − 売上原価 |
| 営業利益 | 売上総利益 − 販売費及び一般管理費(本業のもうけ) |
| 経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用(利息など本業以外も含む) |
| 税引前当期純利益 | 経常利益 + 特別利益 − 特別損失 |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益 − 法人税等(最終的なもうけ) |
あるお店が1年間で、売上1,000万円・売上原価600万円・販売費及び一般管理費300万円だったとします。
・売上総利益 = 1,000 − 600 = 400万円
・営業利益 = 400 − 300 = 100万円
このように、上から順に引いていくのがP/Lの読み方です。
7. 損益分岐点(ここが計算のヤマ)
損益分岐点とは、利益がちょうどゼロになる売上高のことです。これより売上が多ければ黒字、少なければ赤字になります。計算するには、費用を2種類に分けて考えます。
- 固定費:売上に関係なく毎月かかる費用(家賃・正社員の給料など)。
- 変動費:売上に比例して増える費用(材料費・仕入など)。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
※ 変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
また、(1 − 変動費率)の部分を限界利益率といい、「売上のうち、固定費の回収にまわせる割合」を表します。
売上高 1,000万円、変動費 600万円、固定費 300万円の会社を考えます。
① 変動費率 = 600 ÷ 1,000 = 0.6
② 1 − 変動費率 = 1 − 0.6 = 0.4(限界利益率)
③ 損益分岐点売上高 = 300 ÷ 0.4 = 750万円
つまり、売上が750万円のとき利益がちょうどゼロ。実際の売上は1,000万円なので、この会社は黒字(利益=1,000 − 600 − 300 = 100万円)と分かります。
公式で割るのは「変動費そのもの」ではなく「(1 − 変動費率)」です。先に変動費 ÷ 売上高で率を出してから計算しましょう。固定費と変動費の振り分けを問われることもあります。
8. 財務指標と減価償却のさわり
財務諸表の数字を使って、会社の状態を測るものさしが財務指標です。よく出るものを押さえましょう。
| 指標 | 意味(ざっくり) |
|---|---|
| 自己資本比率 | 総資本(資産)のうち、返さなくてよい自己資本(純資産)の割合。高いほど財務が安定。 |
| ROE(自己資本利益率) | 自己資本を使って、どれだけ利益を生んだかの割合。高いほど効率よく稼いでいる。 |
| ROA(総資産利益率) | 会社の全資産を使って、どれだけ利益を生んだかの割合。 |
| 流動比率 | 短期に返す負債に対し、短期で現金化できる資産がどれだけあるか。支払い能力の目安。 |
建物・機械・パソコンなど、長く使う高額な資産(固定資産)は、買った年に全額を費用にするのではなく、使う年数(耐用年数)に分けて少しずつ費用にしていきます。これを減価償却といいます。毎年同じ額を費用にする定額法と、はじめに多く費用にする定率法があります。
100万円のパソコンを5年使うなら、「100万円を1年で使い切った」と考えるより、「毎年20万円ずつ価値を使った」と考えるほうが実態に合いますよね。減価償却は、この“ならし”を会計のルールで行うものです。
〇か×で答えてみましょう。ボタンを押すと答えと解説が出ます。
Q1. PDCAサイクルのCは「評価(Check)」を表す。
正解は 〇。PDCAは Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)。Cは結果を確認・評価する段階です。
Q2. 製品や地域ごとに部門を分け、各部門に権限を持たせる組織を「職能別組織」という。
正解は ×。それは事業部制組織です。職能別組織は「営業・製造・経理」など仕事の機能ごとに分ける形です。
Q3. BCP(事業継続計画)は、災害やシステム障害が起きても重要な事業を止めない/早く復旧させるための計画である。
正解は 〇。BCPは非常時でも事業を継続・早期復旧させるためにあらかじめ立てておく計画です。
Q4. 原因を魚の骨のように枝分かれで整理する図を「パレート図」という。
正解は ×。それは特性要因図(フィッシュボーン図)です。パレート図は、件数の多い順に並べて重要項目を見つける図です。
Q5. ブレーンストーミングでは、出されたアイデアを批判せず、質より量を重視する。
正解は 〇。「批判しない・自由奔放・質より量・結合便乗」が4原則。否定せずたくさん出すのが目的です。
Q6. 損益分岐点とは、利益が最大になる売上高のことである。
正解は ×。損益分岐点は利益がちょうどゼロになる売上高です。これより売上が多ければ黒字、少なければ赤字になります。
Q7. 固定費300万円、変動費率0.6のとき、損益分岐点売上高は750万円である。
正解は 〇。300 ÷(1 − 0.6)= 300 ÷ 0.4 = 750万円。公式どおりに計算できています。
Q1. 会社の存在意義や基本的な信念を表す、活動の柱を何という?
Q2. PDCAサイクルを順に言うと?
Q3. 特定の目的のために各部門から一時的に人を集め、終わったら解散する組織は?
Q4. 経営者を監視・けん制し、会社が健全に経営されるようにするしくみは?
Q5. 件数の多い順に棒グラフを並べ、累積比率を折れ線で重ねた図は?
Q6. 在庫が一定量まで減ったら発注する、その基準となる量を何という?
Q7. 損益分岐点売上高を求める公式は?
Q8. 高額な固定資産を、使う年数に分けて少しずつ費用にする会計処理は?
📌 このページのまとめ
- 会社活動の柱は経営理念。改善の基本はPDCA(計画→実行→評価→改善)。
- 経営組織は職能別/事業部制/マトリックス/プロジェクトの4つを区別する。
- CSR・コーポレートガバナンス・コンプライアンス・BCPは、意味と目的をセットで覚える。
- 業務分析の頻出はQC七つ道具(パレート図・特性要因図・散布図・ヒストグラム・管理図など)とABC分析・回帰分析・線形計画法。
- 会計はP/L(1年のもうけ)とB/S(時点の財産)。利益は売上総利益→営業利益→…と段階的。
- 損益分岐点 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)。利益がゼロになる売上高。
- 財務指標は自己資本比率・ROEなど。固定資産は減価償却で少しずつ費用化する。