🎯 このレッスンのゴール
- 情報システム戦略の「全体最適」とEAの考え方が分かる
- BPR・BPM・RPA・業務のモデル化(DFD・E-R図・BPMN)を区別できる
- SaaS・PaaS・IaaSの違いと、RFI→RFPの調達の流れを言える
- IoT・AI・ビッグデータ・DXなど新傾向キーワードの意味をつかむ
こんにちは、先生役の「パソコン先生」です。このレッスンのテーマは「ITを使って会社の仕事をもっと良くする」こと。クラウドやIoT、AI、DXといった、ニュースでもよく聞くカッコいい言葉がたくさん出てきます。むずかしそうに見えますが、ひとつずつ「どんな場面で役立つの?」を一緒に見れば大丈夫。試験で点が取れるレベルまで、やさしく深掘りしていきましょう!
1. 情報システム戦略と全体最適
情報システム戦略とは、経営戦略を実現するために、会社全体でどんな情報システムを作り・使っていくかという長期の方針のことです。前のレッスンで学んだ「経営戦略」があって、それを支えるためにITをどう使うかを決める――この関係を押さえましょう。
大事なキーワードが全体最適(ぜんたいさいてき)です。これは、部署ごとにバラバラに便利なシステムを作るのではなく、会社全体で見て一番よい形にそろえるという考え方です。
営業部だけ便利な顧客管理ソフト、経理部だけ便利な会計ソフト……と各部署が好き勝手に選ぶと、データがつながらず二重入力だらけに。これが「部分最適」で、結果として会社全体ではムダが増えます。全体最適は、最初から「全社で連携できる形」を設計図にそって整えること。家を建てるとき、各部屋が勝手に増築するのではなく、最初に全体の間取り図を引くイメージです。
その「全体の設計図」をきちんと描くための考え方がEA(エンタープライズアーキテクチャ)です。EAは、現状(As-Is)とあるべき姿(To-Be)を整理し、会社の業務とシステムを最適な形に近づけていく手法。次の4つの体系(4階層)で整理するのが特徴です。
| EAの4体系 | 整理する内容(ざっくり) |
|---|---|
| ビジネスアーキテクチャ | 業務のやり方・組織・流れ(何の仕事をどう進めるか) |
| データアーキテクチャ | 業務で使うデータの種類や関係(どんな情報を扱うか) |
| アプリケーションアーキテクチャ | 業務を支えるアプリ・ソフトの構成 |
| テクノロジアーキテクチャ | 土台となる機器・ネットワークなどの技術基盤 |
こうした方針を具体的な計画に落とし込んだものが情報システム化計画(全体システム化計画)です。「いつ・どのシステムを・どんな順番で作るか」という中長期のロードマップにあたります。
経営戦略 → 情報システム戦略(全体最適・EA) → 情報システム化計画、という上から下への流れを押さえましょう。EAの目的は「全体最適の実現」と覚えるのが試験対策の近道です。
2. 業務プロセスの改善とモデル化
ITで会社を良くするには、まず今の仕事のやり方(業務プロセス)を見直すことが欠かせません。ここでよく出る用語を整理します。
| 用語 | 意味 | ポイント |
|---|---|---|
| BPR (ビジネスプロセス リエンジニアリング) | 業務プロセスを根本から抜本的に作り直すこと | 「ゼロから設計し直す」改革。大きく変える |
| BPM (ビジネスプロセス マネジメント) | 業務プロセスを継続的に見直し改善し続ける管理活動 | PDCAを回して少しずつ良くし続ける |
| ワークフロー システム | 申請・承認などの業務の流れを電子化するしくみ | 稟議・経費精算などをシステム上で回す |
名前が似ていて混同しがち。BPRは「一度に大きく作り直す(改革)」、BPMは「継続的に少しずつ改善し続ける(管理)」。ReengineeringのR=再構築、ManagementのM=管理、と頭文字でイメージすると区別できます。
業務のモデル化(図で表す技法)
業務を改善するには、現状を「図」にして見える化すると分かりやすくなります。代表的な図の種類を覚えましょう。
| 図の種類 | 何を表す? |
|---|---|
| DFD (データフロー図) | データの流れを表す図。データがどこからどこへ流れ、どう処理されるかを矢印で示す |
| E-R図 (実体関連図) | データ同士の関係を表す図。「顧客」と「注文」のような実体(エンティティ)の関連を示す。データベース設計で使う |
| BPMN | 業務の流れ(手順)を、決まった記号で表す国際的な表記法 |
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、人がパソコンで行う定型的な事務作業をソフトウェアのロボットに代行させるしくみです。たとえば「毎朝メールの添付ファイルを開いて表計算に転記する」といった、ルールが決まった繰り返し作業を自動化できます。AIのように自分で考えるのではなく、決められた手順を正確にこなすのがRPAの特徴。事務作業の効率化(働き方改革)の文脈でよく出ます。
3. ソリューションビジネスとクラウド
ソリューションビジネスとは、お客さまが抱える問題(課題)を、ITを使ってまとめて解決してあげるビジネスのことです。その中心が、いまや当たり前になったクラウドサービスです。
クラウドの反対がオンプレミス。これは自社で機器(サーバなど)を購入し、社内に設置して運用する従来型のやり方です。一方クラウドは、インターネット経由で、必要な分だけサービスとして借りて使う形。どこまでを借りるかで、SaaS・PaaS・IaaSの3つに分かれます。
| 種類 | 借りる範囲 | 利用者が使うもの | 例 |
|---|---|---|---|
| SaaS (サース) | ソフトウェア(アプリ)まで全部 | 完成したアプリをそのまま使う。利用者は管理ほぼ不要 | Web版のメール・表計算、顧客管理サービス |
| PaaS (パース) | アプリを動かす土台(基盤)まで | OSや開発・実行環境を借り、その上に自社でアプリを作る | アプリ開発・実行のためのプラットフォーム |
| IaaS (イアース) | ハードウェア(基盤)だけ | サーバ・ストレージ・ネットワークを借り、OSから自社で用意 | 仮想サーバの貸し出しサービス |
食事をするのに、
・SaaS=レストランで完成した料理を食べる(自分は何もしない)
・PaaS=キッチン付きの貸しスペースで、道具と材料を借りて自分で調理する
・IaaS=厨房(場所と設備)だけ借りて、材料も調理も全部自分でやる
S→P→Iの順に「借りる範囲が狭く、自分でやることが増える」と覚えましょう。SaaSが一番おまかせ、IaaSが一番自由(その分手間も多い)です。
関連する用語も整理しておきます。
- ASP(アプリケーションサービスプロバイダ):アプリケーションをネット経由で提供する事業者。SaaSの考え方の前身にあたります。
- SOA(サービス指向アーキテクチャ):業務の機能を「サービス」という部品の集まりとしてとらえ、それらを組み合わせてシステムを作る設計の考え方。変化に柔軟に対応しやすくなります。
- ハウジング/ホスティング:ハウジングは自社サーバを業者の施設に「置かせてもらう」、ホスティングは業者のサーバを「借りる」サービス。
4. システムの企画から調達まで
新しいシステムを作るときは、いきなり開発に入るのではなく、「何のために・何を作るか」をしっかり決めてから進めます。この上流の流れが頻出です。
システム化構想(経営課題からIT活用の方向性を描く)→ システム化計画(実現の計画・体制・費用を立てる)→ 要件定義(利用者が必要とする機能・性能を具体的に決める)
要件定義はとても重要です。ここで決める内容は2種類あります。
- 機能要件:システムが何をするか(必要な機能・処理の内容)。
- 非機能要件:機能以外の品質や条件(性能・使いやすさ・セキュリティ・信頼性など)。
調達の流れ(RFI → RFP)
作るものが決まったら、外部のベンダ(IT会社)に発注するための調達を行います。ここで出てくる略語が試験の超頻出ポイントです。
| 順番 | 用語 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | RFI (情報提供依頼書) | ベンダに「どんな技術や製品がありますか?」と情報の提供を求める。まず情報集めから |
| ② | RFP (提案依頼書) | ベンダに「こういう要件で提案してください」と正式に依頼する。要件を提示する |
| ③ | 提案・見積 | ベンダが提案書・見積書を提出する |
| ④ | ベンダ選定 | 提案内容・金額を比べて発注先を選ぶ |
| ⑤ | 契約 | 選んだベンダと契約を結ぶ |
並びは必ずRFI(Information=情報)→ RFP(Proposal=提案)。I=情報をもらう(先)、P=提案をもらう(後)と頭文字で覚えると確実です。「見積を依頼する=RFP」も狙われます。
調達では、価格や性能だけでなく社会的な責任も重視されます。
- グリーン購入(グリーン調達):環境への負荷が小さい製品・サービスを優先して選ぶこと。
- CSR調達:取引先の労働環境や人権への配慮など、企業の社会的責任(CSR)を考えて調達先を選ぶこと。
5. 新傾向キーワード(IoT・AI・ビッグデータ)
ここからが、近年とくに出題が増えている分野です。ニュースで聞く言葉も多いので、得点源にしましょう。
IoT(モノのインターネット)
IoT(Internet of Things)とは、あらゆるモノをインターネットにつなぎ、情報をやり取りするしくみです。家電・自動車・工場の機械などがネットにつながり、データを集めたり遠隔操作したりできます。関連用語を押さえましょう。
| 用語 | 役割 |
|---|---|
| センサー | 温度・光・動きなど現実の情報を読み取る部品(入力) |
| アクチュエータ | 受け取った指示でモノを動かす部品(出力。モーターやバルブなど) |
| エッジコンピューティング | クラウドに送らず、データが生まれる現場の近く(端=エッジ)で処理する方式。応答が速く通信量も減る |
畑に湿度センサーを置き、乾いたら自動で水やり装置(アクチュエータ)を動かす――これがIoT農業の一例。センサーで「読み取り」、アクチュエータで「動かす」という役割分担をイメージすると、両者を取り違えません。
AI(人工知能)
AI(人工知能)は、人間のような知的な判断をコンピュータで行う技術。その中心が「自ら学ぶ」しくみです。3つの言葉の関係を整理します。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 機械学習 | 大量のデータからコンピュータが自分でルール・パターンを学ぶこと。AIを実現する代表的な方法 |
| ディープラーニング (深層学習) | 機械学習の一種で、人間の脳をまねたニューラルネットワークを多層にして複雑な特徴を学ぶ。画像・音声認識などで高い性能 |
| 生成AI | 学習した内容をもとに、文章・画像・プログラムなどを新しく作り出すAI。プロンプト(指示文)を与えて使う |
大きい順に AI > 機械学習 > ディープラーニング。ディープラーニングは機械学習の一部、機械学習はAIを実現する手法の一つ、という入れ子の関係です。生成AIではAIが「もっともらしいが誤った内容」を作るハルシネーションに注意が必要、という点も近年問われます。
AIを支えるのがビッグデータです。これは量が多く・種類も多様で・発生や更新が速い、巨大なデータ群のこと。SNSの投稿、購買履歴、センサーデータなどを分析して、新しい価値(売れ筋予測や故障予知など)を生み出します。AIはこのビッグデータを学ぶことで賢くなる、という関係です。
組込みシステムと、身近な各種システム
組込みシステムとは、家電や自動車などの機器の中に組み込まれ、特定の機能を制御する専用のコンピュータシステムです。炊飯器・エアコン・デジタルカメラなど、私たちの周りにあふれています。IoTの「モノ」側を支える技術でもあります。
試験では、身近なシステムの名前と役割もよく問われます。略語を整理しましょう。
| 用語 | 意味・役割 |
|---|---|
| POSシステム | 店のレジで、商品が売れた瞬間に販売情報を記録・集計するしくみ。在庫管理や売れ筋分析に使う |
| GPS | 人工衛星を使って現在地(位置)を測定するしくみ。カーナビやスマホの地図で利用 |
| EC(電子商取引) | インターネット上での商品やサービスの売買。ネットショッピングなど |
| 電子マネー | カードやスマホに記録した電子的なお金で支払うしくみ |
| フィンテック (FinTech) | 金融(Finance)とIT(Technology)を組み合わせた新しい金融サービス。スマホ決済・送金など |
| MaaS(マース) | 電車・バス・タクシーなど複数の移動手段を一つのサービスとして検索・予約・決済できるしくみ |
| CDN | 動画などの大容量データを、利用者の近くのサーバから配信し負荷を分散するしくみ |
6. DX(デジタルトランスフォーメーション)
これらの新技術をまとめる、いま最も重要なキーワードがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
DXとは、データやデジタル技術を活用して、製品・サービスやビジネスのしくみそのものを変革し、新しい価値を生み出して競争力を高めることです。単に紙をPDFにする「デジタル化(IT化)」にとどまらず、ビジネスのやり方や会社のあり方まで変えてしまう点が、ただのIT導入との違いです。
レンタルビデオ店で「貸出記録を紙からパソコン管理にした」のはデジタル化。一方、「店舗での貸出をやめ、ネット配信(サブスク)というまったく新しいビジネスに作り変えた」のがDXです。仕事の道具をデジタルに替えるのがデジタル化、ビジネスそのものを変えるのがDX、と区別しましょう。
・工場の機械にIoTセンサーを付け、集めたデータをAIで分析して故障する前に予知保全する。
・購買履歴のビッグデータをAIで分析し、一人ひとりに最適な商品を自動でおすすめする新サービスを始める。
IoT・AI・ビッグデータを組み合わせて「新しい価値」を生むのがDXの典型例です。
7. 略語の総整理(直前チェック)
このレッスンに出てきた略語を一覧にしました。試験前にここだけ見直せばOKです。
| 略語 | ひと言で言うと |
|---|---|
| EA | 全体最適のための「会社の設計図」を整理する手法 |
| BPR | 業務プロセスを抜本的に作り直す改革 |
| BPM | 業務プロセスを継続的に改善し続ける管理 |
| RPA | 定型事務をソフトのロボットで自動化 |
| SaaS / PaaS / IaaS | クラウドで借りる範囲の違い(アプリ/基盤/ハード) |
| SOA | 機能をサービス部品として組み合わせる設計思想 |
| RFI / RFP | 情報提供依頼/提案依頼(この順) |
| IoT | モノをインターネットにつなぐしくみ |
| DX | デジタルでビジネスそのものを変革する |
〇か×で答えてみましょう。ボタンを押すと答えと解説が出ます。
Q1. 各部署がそれぞれ便利なシステムを個別に最適化することを「全体最適」という。
正解は ×。部署ごとの個別最適は部分最適です。会社全体で見て最もよい形にそろえるのが全体最適で、EAはその実現を目指します。
Q2. SaaSは、利用者がOSやハードウェアを自分で用意し、サーバだけを借りるサービスである。
正解は ×。それはIaaSの説明です。SaaSは完成したアプリケーションまで借りて、そのまま使う形(一番おまかせ)です。
Q3. 調達では、まずRFI(情報提供依頼)で情報を集め、次にRFP(提案依頼)で提案を求めるのが一般的な順序である。
正解は 〇。RFI(Information=情報)→ RFP(Proposal=提案)の順。Iが先、Pが後と覚えましょう。
Q4. RPAは、定型的な事務作業をソフトウェアのロボットに代行させて自動化するしくみである。
正解は 〇。RPAは、ルールの決まった繰り返しの事務作業(転記など)を自動化します。自分で考えるAIとは別物です。
Q5. IoTで、現実の温度や動きなどの情報を読み取る部品を「アクチュエータ」という。
正解は ×。情報を読み取る(入力)のはセンサーです。アクチュエータは受けた指示でモノを動かす(出力)側です。
Q6. ディープラーニングは、機械学習の一種である。
正解は 〇。包含関係は AI > 機械学習 > ディープラーニング。深層学習は機械学習の一手法です。
Q7. 紙の書類をPDFに置き換えるなど、業務の道具をデジタルに替えるだけのことをDXという。
正解は ×。それは単なるデジタル化(IT化)です。DXはデジタル技術でビジネスのしくみそのものを変革し、新しい価値を生むことを指します。
Q1. 会社全体で見て最もよい形にシステムをそろえる考え方を何という?
Q2. 業務プロセスを根本から抜本的に作り直す改革を何という?
Q3. データの「流れ」を表す図は何?
Q4. 完成したアプリケーションまでをネット経由で借りて使うクラウドの形は?
Q5. ベンダに「提案してください」と正式に依頼する文書は?
Q6. IoTで、指示を受けてモノを動かす(出力する)部品は?
Q7. 量が多く・多様で・発生が速い巨大なデータ群を何という?
Q8. 金融とITを組み合わせた新しい金融サービスを何という?
📌 このページのまとめ
- 情報システム戦略のカギは全体最適。その設計図を整理する手法がEAで、計画に落とすのが情報システム化計画。
- BPR=抜本的に作り直す改革、BPM=継続的な改善。RPAは定型事務の自動化。図はDFD(流れ)・E-R図(関係)・BPMN(手順)。
- クラウドは借りる範囲で SaaS(アプリ)>PaaS(基盤)>IaaS(ハード)。反対はオンプレミス。
- 調達は RFI(情報)→ RFP(提案) の順。要件定義では機能要件・非機能要件を決める。
- 新傾向は IoT(センサー・アクチュエータ・エッジ)、AI(AI>機械学習>ディープラーニング、生成AI)、ビッグデータ、組込みシステム、POS/GPS/EC/フィンテック/MaaSなど。
- DXはデジタル技術でビジネスそのものを変革すること。単なるデジタル化とは別物。